それは音楽人としてではなく人間として…。

その人の訃報が入ったとき、僕は仕方ないと思った。

人間は死ぬ。形あるものいつか壊れる。仕方ないと思った。
それからちょっとしてから、僕はその人の生前の姿をブラウン管越しに目の当たりにして、とてももどかしい、切なくやりきれない気持ちになった。

彼女のそのただ純粋に歌える美しい姿に対する感動ともうこんなに美しい人はいないという寂しさ。
それはただ曲を聴くリスナーとしてではなく、様々な楽器を聞き分ける音楽人としてでもなく、ただ一人の人間として、涙がでた。

人は死んでこそ名を残すという。
しかし、死ねば人は人を忘れる。

僕は彼女を忘れたくないし、忘れさせたくない。

それは本当に今更かも知れないけど、僕は受け継ぎたい。彼女の歌を。声を。心を。

これからもずっと。