約束なんだ。この世の。

7限目の授業中、ポケットに入ったままのケータイが鳴った。
常識的に考えれば授業中なのでケータイを開いてメールを見るなんて事はしないだろう。
しかし、我々は基本的にバレないようにして見ている。
何故それを今日しなかったのか。めんどくさかったのだ。
静かにケータイのバイブ音がやむのを待った。
いつも一曲連動に設定してあるのに3回ほどのバイブで止まり「あれ?」と思ったが、まあ誰か間違えて電話でもしたんだろうと自己解決した。

授業が終わり、帰りの電車の中で「そういえば」と思いケータイを開く。
いつもと表記が違う。Cメールだった。
Cメールを使って連絡してくるのは決まって父親だ。
内容を見てみる。
たった一文。

「ルルが死んだ。」

ルルは家で飼っている猫だ。
元々耳が寝ている筈の品種なのだが、彼は耳が普通の猫同様立っていた。
売り物としては失敗作だろう。元々それが売りの猫なんだから。
だが、だから保健所というのもおかしな話である。
人間の勝手な品種改良でたまたまそう生まれてこなかったがために殺すなど、勝手にもほどがある。
親父はペット屋から彼を引き取った。そうしてやってきたのだ。

死んだと聞いたとき、あまりにもショックは大きかった。
「またか」と、ミミの事を思い出した。
こういう経験は何度しても慣れない。慣れるはずがない。

膀胱炎だったらしい。昨日からあまり身体を動かそうとしなかったため、今日病院に連れていったら既に毒素が身体に回っていた。3人の医師が懸命に処置してくれたが、心臓は再び動かなかった。

元々体も弱かった。いつも捕まえると肩にしがみついて離れなかった。昼はソファーでゴロゴロと寝息を立てていた。

猫ぐらいで何を大げさなと思うかもしれない。しかし家族だ。思い出は多い。これが父や母だったらもっとなんだろう。

帰宅途中もぼーっとしていた。今もデスクの前でぼーっとしている。ギターも手につかない。

また先に行って待っててくれるんだろう。ミミと一緒に好きなだけ鰹節を食べて待っててくれ。俺はまだしばらくいけないから。

I LOVE YOU BABY.俺はまだやることがあるから、上から見守っててくれ。またな。